はじめに

リボンというのは、「Microsoft Office 2007」から採用された、新しいUI(ユーザーインターフェイス)です。 Windows7では、「ペイント」や「ムービーメーカー」にも取り入れられています。
最近パソコンを使い始めた晴眼者には、こちらの方がわかりやすいという声もあるようですが、キーボードを使って操作する音声ユーザーにとっては、曲者というか、最初は操作に迷ってしまう厄介なシロモノです。

ここでは、リボンの基本的な操作法について、「Office」とWindowsの標準的なアプリケーションの二つに分けて、簡単に説明していきます。
※各アプリケーションの具体的な操作については、説明していませんので念のため。
Office 2010 の操作については、下記のページを参照なさることをおすすめします。

視覚障害者のためのOffice 2010キー操作マニュアル トップページ
http://span.jp/office2010_manual/top.html

実践パソコン環境

OS : Windows7 Pro SP1 64bit
スクリーンリーダー : PC-Talker7 2.12
Office : Microsoft Office 2010

リボンの基本的なイメージ

Windowsの設定のダイアログボックスには、複数のタブシートによって構成されるものが多いことはご存知だと思います。

Windowsの設定のダイアログボックスを開く戸、最初のタブシートの中にフォーカスが合っています。 そこから、Shiftキー+Tabキーを押すと、「○○ のタブコントロール 選択 タブで決定」と読む所に移動します。

ここは、左右の矢印キーで移動します。そして、目的のタブの見出しの所でTabキーを押して中に入り、設定の操作を行なうようになっています。
リボンの操作のイメージとして、この設定のダイアログボックスの操作が近いのではないかと思います。

実際、WordやExcel、ペイントやムービーメーカーを起動して、Altキーを押すと、「ホーム のタブコントロール 選択 タブで決定」というふうに読み上げます(ホーム の部分はその時によって違いますが)。

次に、設定のダイアログボックスと同じように、操作したい項目の見出しを、左右矢印キーで移動しながら探します。この時、左右矢印キーを押すごとに、リボンの部分の表示が変化します。

そして、Tabキーを押すと、タブの見出しの中の、具体的な操作の項目の一覧の中に入ります。このページでは、この部分を「リボンの領域」と勝手に名付けて説明することにします。
この一覧の中を移動するには、Tabキーを押していきます。操作したい項目が見つかったら Spaceキーを押して実行します(*注)。
Enterキーでも良いのですが、Spaceキーの方が確実に動作するケースが多いように感じますので、まず Spaceキーを押すことをおすすめします。

*注:項目の中には、リストになっていて、下矢印キーを押して操作するものもあります。

以前(または他のアプリケーション)は、Altキーを押すと、メニューバーにフォーカスされるため、そこから左右矢印キーで移動してから、下矢印キーでそのメニューを開いて項目を探して Enterキーで実行するという手順になっていました。
しかし、リボンでは操作性が変わっているため、最初は戸惑ってしまいます。 私もまずここでつまずいてしまっていました。

頭と手が メニューバーに馴染んでいるため、いまだにリボンの操作には戸惑いを感じますが、とりあえず突き合っていかなければならないので、ゆっくりと慣れていくことにしましょう。

リボンを採用したアプリケーションのウィンドウ

リボンを採用したアプリケーションのウィンドウの構成はどうなっているのかを、Word 2010 を例にして、リボンを採用していないアプリケーションの例として Word 2003 と比較して、簡単に説明します。
※ここではステータスバーなどは省いています。

@タイトルバー … 左端に「クイックアクセスツールバー」が追加されています(Office 2007 から)。リボンの項目は数が多いため、よく使う項目をここに登録しておくと、すぐに実行することが出来ます(後述)。

Aメニューバー … リボンのタブ(タブコントロール)に変更されています。

Bツールバー … リボン(の領域)に変更されています。

一番上にリボンのタブ、その下にリボンの領域があり、その下が編集(作業)エリアになっています。 この画面構成は、Excel 2010 や、他のアプリケーションでも同じです。

それぞれのフォーカスの移動

リボンのタブ・リボンの領域・編集エリアの間のフォーカスの移動は、次のように行ないます。

アプリケーションを起動すると、最初はフォーカスは編集エリアに当たっています。 そこで Altキーを押すと、リボンのタブにフォーカスが移ります。

そこからTabキーを押すと、リボンの領域に入ります。リボンの領域での項目の選択は、Tabキー または Shiftキー+Tabキーで行ないます。

リボンの領域で操作を行なわずに、編集エリアに移動したい時は、Altキー または Escapeキーを押します。

クイックアクセスツールバーは、Altキーでリボンのタブにフォーカスを移動してから、Shiftキー+Tabキーで移動します。

リボンの領域の中に入っている時に、リボンのタブに移動するには Altキーを押して、いったん編集エリアに移動してから、もう一度 Altキーを押します。
Tabキーをどんどん押していっても戻れますが、手間がかかります。

Office のリボン

PC-Talker7と、PC-TalkerXP 5.0 からは、Officeの読み上げのプログラムが、二点 変更になりました。 ひとつは、読み上げのための内部処理の変更なので、ユーザーにはあまり関係ないのですが、もう一点 操作性に関わる重要な変更があります。

それは、Officeのリボンの所(従来のツールバー)に、PC-Talker独自のメニューの領域が追加されたことです。このメニューは、「KSD Officeメニュー」と呼ばれています。
このメニューは、Office 2003 のメニューバー(プルダウンメニュー)に似ていますが、操作性が違っています。

まずは、「KSD Officeメニュー」に移動する手順です。
※音声ガイドの中で、「Alt Y」というような、アクセスキーのガイドがありますが、ここではその部分は省略しています。

1.WordやExcelを起動したら、操作可能な状態になるまで待ちます。
Officeアプリケーションは、パソコンの性能にもよりますが、起動した直後はすぐに操作が出来ません。 操作可能になるまで、スプラッシュ画面という、「準備中」を表す小さなウィンドウが画面に表示されています。
スプラッシュ画面が消えると、たとえば Wordだと、「Word 文書1」と音声があって、操作可能な状態になったことがわかります。

2.操作可能になったら、Altキーを押します。
「○○ のタブコントロール 選択 タブで決定」とガイドされます。ホームタブの場合が多いのですが、他のタブの名前を読むこともあります。

3.左右矢印キーで、「メニュー」と読む項目に移動します。
ここが「KSD Officeメニュー」の入口です。他にも入口はあるのですが、ここでは省略します。
※他には、Altキーを押してから、アルファベットの Y を押しても、このタブにフォーカスが移動します。

4.次に、Tabキー または 下矢印キーを押して、「KSD Officeメニュー」の領域の中に入ります。 私は、他のタブに入る時と区別するために、下矢印キーを押していますが、どちらでもかまいません。

5.「ファイル の ドロップダウンボタン」とガイドされます。
この「ボタン」は、文字通りの「ボタン」です。 Office 2003 や、他のアプリケーションのような「プルダウンメニュー」ではありません。
したがって、下矢印キーを押してもメニューは開かず、エラー音がします。 ボタンなので、Spaceキーを押さないと、メニューが開いてくれないのです。

では、それぞれのメニューを開く前に、どういう項目があるのか、Wordの例を見てみます。 むかって左から、

ファイル
読み
編集
表示
挿入
書式
ツール
罫線
ウィンドウ
ヘルプ

という10項目が、横に並んでいます。 それぞれの項目の移動は、左右矢印キー またはTabキーで行ないます。
この部分はトグル式になっていて、右端の「ヘルプ」の所から 右矢印キーを押すと、左端の「ファイル」に戻ります。
※ただし、Tabキーで移動すると、余計な(?)所に寄り道してから戻ってきます。

6.目的の項目が見つかったら、前にも書いたように Spaceキーを押します。
すると、その項目のメニューが開きます。 メニューは タテ一列に表示されていて、サブメニューのある項目では、項目の後に「メニュー」とガイドがあり、右矢印キーを押すと、サブメニューが開きます。
このメニューの中から、上下左右の矢印キーで目的の項目を選択して、Enterキーを押して実行します。

ただし、このメニューはプルダウンメニューではないので、左右矢印キーを押しても、隣の項目のメニューには移動しません。
形はプルダウンメニューと似ていますが、操作や設定のダイアログボックスと同じと考えた方がいいようです。
このメニューを閉じるには、Altキーをもう一度押すか、Escapeキーを押します。

メニューから操作を実行したり、開いたメニューを閉じると、フォーカスは元の編集エリアに戻ります。

■「ファイル」と「ヘルプ」タブ

この二つのタブにカーソルを合わせると、他のタブとは音声ガイドが違っています。この二つのタブでは、項目の後に「プッシュボタン」と読みます。
このガイドのとおり、この二つのタブは、Tabキーで中に入る入口ではなく、Spaceキーを押して、それぞれのウィンドウを開くためのボタンになっています。

「ファイル」のウィンドウで、操作をキャンセルしてウィンドウを閉じるには、Escapeキーを押せばいいのですが、「ヘルプ」のウィンドウを閉じるには、Altキー+Spaceキーを押して システムメニューを開き、上下矢印キーで「閉じる」を選んで Enterキーを押します(または Altキー+F4キー)。

それ以外のアプリケーション

Office以外のアプリケーション、「ペイント」や「ムービーメーカー」などのリボンの操作も、Officeアプリケーションとほとんど同じです。
むしろ、「KSD Officeメニュー」が無いので、いくらかシンプルです。
ここでは「ペイント」を例に説明していきます。

「ペイント」を起動したら、Altキーを押して、タブコントロールにフォーカスします。 左右矢印キーで目的の項目を探して、Tabキーで中に入り、さらにTabキーで移動しながら、操作や設定の項目を探し、Spaceキーで実行します。

「ペイント」で、Officeの「ファイル」に当たるのは、「アプリケーション」タブです。 「アプリケーション」タブは、Officeと同じようにボタンになっていて、Spaceキーを押して、ウィンドウを開きます。
このウィンドウの中では、上下矢印キー またはTabキーで項目を移動しながら選択します。 サブメニューのある項目では、項目の後に「メニュー」とガイドされます。

操作をキャンセルして、ウィンドウを閉じる時は、Escapeキーを押します。

「ヘルプ」も、Spaceキーでウィンドウを開き、システムメニューから「閉じる」を押して閉じます。

クイックアクセスツールバー

WordやExcelなどのOfficeアプリケーションでは、リボンの領域の中の項目が膨大な数になっています。この項目を、いちいちTabキーでたどっていくのは大変です。
普段よく使う項目を、この「クイックアクセスツールバー」に登録しておくと、すぐに目的の操作を実行することが出来ます。 ここでは Word 2010 を例に、クイックアクセスツールバーの使い方と、登録の方法について説明します。

クイックアクセスツールバーの操作

クイックアクセスツールバーに移動するには、まず Altキーを押して、リボンのタブにフォーカスを移動します。

次に、Shiftキー+Tabキーを押します。
すると「ツールバーのユーザー設定 の プッシュボタン」と音声ガイドがあります。 これが、クイックアクセスツールバーのカスタマイズのウィンドウを開くボタンです。
※このウィンドウについては後述。

そこから、さらに Shiftキー+Tabキーを押していくと、 やり直し  元に戻す  上書き保存 という項目を読み上げます。 これは、あらかじめクイックアクセスツールバーに登録されている項目です。
※ここに表示されている項目(ボタンやリスト)の操作性は、リボンの領域のものと同じです。

ツールバーのユーザー設定

「ツールバーのユーザー設定」のボタンを押すと、設定のメニューが開きます。 このメニューには、新規作成 開く などの項目がタテ一列に並んでいます。
項目の後に「チェック」と読むものは、既にクイックアクセスツールバーに表示されているものです。必要の無いものがあれば、その項目の所で Enterキーを押してチェックを解除します。 すると、クイックアクセスツールバーからその項目がなくなります。

クイックアクセスツールバーに新しい項目を追加する

クイックアクセスツールバーに 新しい項目を追加するには、二通りの方法があります。 一つは、「ツールバーのユーザー設定」のメニューからオプションのウィンドウを開いて設定する方法です。
もう一つは、リボンの領域の中に入って、追加したい項目のコンテキストメニュー(右クリックメニュー)から追加する方法です。 こちらの方が簡単なので、まず、こちらから説明します。

■コンテキストメニューから追加する方法

リボンの領域に入り、追加したい項目の所で Applicationキー またはShiftキー+F10キーを押してコンテキストメニューを開きます。
メニューが開くと、「クイックアクセスツールバーに追加」という、一番上の項目が選択されていますので、そのまま Enterキーを押します。
これで、その項目がクイックアクセスツールバーに追加されます。

■オプションのウィンドウから追加する方法

Altキーでリボンのタブにフォーカスを移動してから、Shiftキー+Tabキーで「ツールバーのユーザー設定」のボタンに移動して Spaceキーを押します。

ツールバーのユーザー設定のメニューが開きます。上矢印キーで「その他のコマンド」を選択して Enterキーを押します。「オプション」のウィンドウが開きます。

最初は設定する項目を選択するリストです。 上下矢印キーで「クイックアクセスツールバー」にカーソルを合わせて Tabキーを押します。

すると、設定したい項目を絞り込むためのドロップダウンリストに移動します。
最初は「基本的なコマンド」になっています。ここからだと、全ての項目が次のリストビューに表示されています。
全体から探して追加する場合は、そのまま Tabキーを押して次のリストビューに移動します。
「ホーム」や「表示」など、特定のタブから項目を追加したい時は、上下矢印キーでその項目を選択して Tabキーを押します。こうすると、次のリストビューには選択した他部の項目だけが表示されます。

ここでは、例として「フォント」の項目を追加してみます。
リストビューを上下矢印キーで移動しながら「フォント」の項目にカーソルを合わせます。

Tabキーで「追加」のボタンに移動して Spaceキーを押します。

続いて、Tabキーで「OK」のボタンに移動して Spaceキーを押します。 これで「フォント」の項目が、クイックアクセスツールバーに登録されます。

■登録した項目をクイックアクセスツールバーから削除する

いったんクイックアクセスツールバーに登録した項目は、後で削除することが出来ます。

クイックアクセスツールバーにフォーカスを移動してから、Shiftキー+Tabキーを押して、削除したい項目まで移動します。

削除したい項目にカーソルを合わせて、Applicationキー またはShiftキー+F10キーを押してコンテキストメニューを開きます(*注)。

メニューが開く戸、最初の項目「クイックアクセスツールバーから削除」が選択されていますので、Enterキーを押します。
これでその項目が、クイックアクセスツールバーから削除されます。

*注:「フォントサイズ」など、エディットボックス(実体はリストですが)の形式になっている項目では、キーボードではコンテキストメニューを開くことが出来ません。
その場合は「オプション」のウィンドウを開き、リストビューで削除したい項目を選択し、「追加」の隣の「削除」のボタンを押して削除します。


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